エリート外科医の灼熱求婚~独占本能で愛しい彼女を新妻に射止めたい~
「早く元気になって、田所さんにうちの麻婆豆腐を食べに来てくださいって伝えてください!」
そのときのことを思い浮かべて笑顔を見せた私は、背の高い近衛先生を静かに見上げた。
「……やっぱり、俺は、こういう百合に惹かれたんだな」
「え……?」
「百合、携帯出して。今すぐ」
そうして私は急かされるまま、エプロンのポケットに入れていた携帯電話を取り出した。
それを近衛先生に渡せば、近衛先生は画面をタップしてどこかに電話をかけ始めた。
「あ……」
近衛先生のズボンのポケットの中で、携帯電話が震えた音がした。
先生は自分の携帯電話を取り出して確認すると、たった今私から受け取ったばかりの私の携帯電話を返してくれた。
「そこに表示されているのが、俺のプライベート用の携帯電話の番号だから」
「え……ええっ⁉」
「もう、待つのは懲り懲りだ。仕事の合間にまで百合のことを考えて、精神衛生上よくないってことがよくわかった」
そこまで言うと近衛先生は、フッと悪戯な笑みを浮かべた。
その笑顔は今まで見た中でも一番色気を含んでいて、私は一秒たりとも先生から目をそらすことができなくなった。
「……先に言っておくが、百合だけは他の誰にも譲る気はないから」
断言した近衛先生は、お医者さんの顔ではなく男の人の顔をしている。
そのまま踵を返してお店の中に戻っていく姿を、私は茫然と立ち尽くしたまま見送った。