エリート外科医の灼熱求婚~独占本能で愛しい彼女を新妻に射止めたい~
 


『でもさぁ、それで、あんなこと言うかねぇ』

『あんなことって?』

『常連さんたちが百合を息子の嫁に~って冗談で話してたら、突然、近衛先生が〝残念ながら百合さんは、どちらの息子さんのものにもなりませんよ〟なんて言い出してさぁ』

『ええー! それ、ヤバくない!? なんか、ドラマみたい! っていうか、その近衛先生って人、絶対、百合ちゃんにラブだって!』

『だ、だから……』

『お前ら、いつまでも、くだらない話をしてんじゃねぇよ! そもそも定職にもついてねぇようなやつが、恋だなんだに浮かれるなんて、身の程をわきまえろ!』


 と、盛り上がっていたら、雷を落とすようなお父さんの喝が入ったことで話は終了。

 三人は肩を落としていたけれど、私は内心でホッとした。

 実際……お父さんの言うとおりだ。

 今の私には恋愛に浮かれる資格はない。

 そもそも、近衛先生みたいな人が私を本気で相手にするわけないし、ましてやタツ兄ちゃんの奥さんが言うみたいな〝ラブ〟なんて、絶対に有り得ない。


『先に言っておくが、百合だけは他の誰にも譲る気はないから』

「……っ」


 だけど、携帯電話に表示された近衛先生の番号と、告げられた言葉を思い出したら、否が応でも頬が熱くなった。

 本当に、悪い冗談だ。

 だけど、頭ではそう思うのに、私はあのときの近衛先生の熱っぽい目が頭から離れなかった。

 
< 52 / 142 >

この作品をシェア

pagetop