エリート外科医の灼熱求婚~独占本能で愛しい彼女を新妻に射止めたい~
『でもさぁ、それで、あんなこと言うかねぇ』
『あんなことって?』
『常連さんたちが百合を息子の嫁に~って冗談で話してたら、突然、近衛先生が〝残念ながら百合さんは、どちらの息子さんのものにもなりませんよ〟なんて言い出してさぁ』
『ええー! それ、ヤバくない!? なんか、ドラマみたい! っていうか、その近衛先生って人、絶対、百合ちゃんにラブだって!』
『だ、だから……』
『お前ら、いつまでも、くだらない話をしてんじゃねぇよ! そもそも定職にもついてねぇようなやつが、恋だなんだに浮かれるなんて、身の程をわきまえろ!』
と、盛り上がっていたら、雷を落とすようなお父さんの喝が入ったことで話は終了。
三人は肩を落としていたけれど、私は内心でホッとした。
実際……お父さんの言うとおりだ。
今の私には恋愛に浮かれる資格はない。
そもそも、近衛先生みたいな人が私を本気で相手にするわけないし、ましてやタツ兄ちゃんの奥さんが言うみたいな〝ラブ〟なんて、絶対に有り得ない。
『先に言っておくが、百合だけは他の誰にも譲る気はないから』
「……っ」
だけど、携帯電話に表示された近衛先生の番号と、告げられた言葉を思い出したら、否が応でも頬が熱くなった。
本当に、悪い冗談だ。
だけど、頭ではそう思うのに、私はあのときの近衛先生の熱っぽい目が頭から離れなかった。