エリート外科医の灼熱求婚~独占本能で愛しい彼女を新妻に射止めたい~
「そういえば……田所さんは、こうも言っていましたね。会社の後継者についても、近々ハッキリさせたいと思っている、と」
「お、伯父さんは、それについて、なんて言ってた!?」
「自分の権力を笠に着て横暴に振る舞う親族よりも、心から信頼できる部下たちに跡を継いでもらったほうが自分も安心だと言っていたような?」
今度こそ、遠野くんの顔色が青くなった。
そんな遠野くんを見て口端を上げた近衛先生は、フッと目を細めて笑った。
「では、これから早速、田所さんが入院していらっしゃる特別室へご案内しましょう。ああ、もしよろしければ、彼女にも同行していただいたほうがいいかもしれません。田所さんも、百合に会いたがっていましたから」
「い……っ、いいよ、案内なんてっ! ひとりで行けるしっ! つ、つーか今日は、これから用事があるのを忘れてて……だ、だから見舞いは、また時間があるときに行くわ!」
そうして遠野くんはまくし立てるように言うと焦った様子で、その場をあとにした。
だんだんと小さくなる遠野くんの背中を、私は半ば呆然としながら眺めていた。
同時に、それまで胸を覆っていた雲が晴れ、心に温かな陽が差したのを感じる。
「百合……大丈夫か?」
「え……」
と、不意に声をかけられた私は、ハッとして顔を上げた。
そうすれば、すぐ近くに近衛先生の綺麗な顔があって息をのむ。
私を抱き寄せた手もそのままで、意識した瞬間、ドクンと心臓が高鳴った。