エリート外科医の灼熱求婚~独占本能で愛しい彼女を新妻に射止めたい~
「い、いえ……ストーカーとかではないです。彼は、私が以前勤めていた会社の後輩なんです」
「前の職場の後輩?」
「はい。ただ、少し……というか、いろいろあった相手で。ハッキリ言うと私は彼が原因で、以前の職場を辞めました」
そこまで言うと私は、自分の心を落ち着けるように一度だけ深く息を吐いた。
──思い出すのは館林物産に、遠野くんが入ってきたときのことだ。
今から約一年半ほど前のこと。
遠野くんは館林物産の親会社の社長の親族ということで、いわゆるコネで途中入社してきた。
『わかんないことばっかりですけど、頑張りますんでよろしくお願いします』
最初は可愛らしい笑顔が印象的な男の子といった印象だった。
一歳年上だった私は遠野くんの教育係を任され、まだ右も左もわからない遠野くんの指導をすることになった。
『ちょっと、遠野くん! このメール何⁉』
けれど、最初の一ヶ月こそやる気を見せていた遠野くんは、あっという間に一八○度、態度を変えたのだ。
至る場面で高慢な態度を取るようになったと言ったほうが正しいだろう。
それが社内だけならまだしも、取引先の相手に対しても同じような振る舞いを見せるようになった。