エリート外科医の灼熱求婚~独占本能で愛しい彼女を新妻に射止めたい~
『【こちらの要求に応えられないようなら、今後一切、そちらとの取引はしませんので、ご承知ください】……って、何これ!?』
『何って、書いてあるとおりですよ。なんか、こっちが提示した金額が高すぎるって文句言ってきたから、貧乏会社が値切るとか有り得ねーと思って。ムカついたから、もううちには発注してくれなくていいですって意味で、その返事をしたんですよ』
そんなことを、当たり前みたいに言うのだ。
そのときに遠野くんが失礼な態度とメールの返信をした相手は、館林物産が創業時から懇意にしていた取引先だった。
私はすぐに部長に報告し、謝罪に伺ったものの、相手の会社の社長さんはカンカンで、今後の取引については見送らせてもらうと言われてしまった。
『野原! お前がついていながら、何をやっているんだ!』
そうして行き場のない部長の怒りは、部下である私へ。
もちろん、部長だって本心では遠野くんに怒りたかったこともわかっている。
でも、遠野くんが親会社の社長の甥であると知っていた部長は、スケープゴートに私を選ぶしかなかったのだ。
『遠野くん! だから、私に話を通さずに勝手に取引先の人と話をするのはやめてって言ったよね⁉』
それからはもう、散々だった。
遠野くんが犯したミスの責任はすべて私に押し付けられ、事情を知らない社員からは白い目で見られるようになった。
もちろん社内の大半の人たちは事情を知っていたし、その人たちからは同情もされていた。
でも、みんな、遠くから私を見ているだけだった。