エリート外科医の灼熱求婚~独占本能で愛しい彼女を新妻に射止めたい~
『あー、俺、昔から、人にあれこれ偉そうに指示されんの、くそダルかったんですよねぇ。つーか、俺の機嫌損ねたら、出世にも響くかもしれないっすよ? ね、野原先輩?』
みんな、必要以上に手を出せば今度は自分が私の二の舞いになるとわかっていたんだ。
だから誰も私の代わりになろうとはしなかったし、遠野くんに対しても強く出ようとはしなかった。
「それまで……私は、私なりに精いっぱい仕事も頑張ってきたつもりでした。でも、段々と、まわりのことまで信じられなくなっていって……」
肝心の遠野くんは、こちらがいくら注意したところで自分のミスを認めないし、態度を改めようともしなかった。
その上、私が少しでも強く出ると、彼は『俺の伯父は親会社の社長』だと主張し、更に高圧的な態度を取った。
「そのうちに、私もどんどん遠野くんに何も言えなくなっていって……。今思えば結局、遠野くんは私を体のいいオモチャにして、困っている様子を見て楽しんでいたんだと思います」
それは先ほど、遠野くんが言っていた。
そうして私はそんな状況のままで一年が過ぎた頃、体調を崩しがちになった。
会社に向かう身体は鉛のように重くなり、遠野くんの顔を見ただけで胃が痛んで、ひどいときは吐き気をもよおすまでになってしまった。