エリート外科医の灼熱求婚~独占本能で愛しい彼女を新妻に射止めたい~
「信じてもらえないかもしれないですけど、それでも私は遠野くんの指導も含め、任された仕事は全うしなきゃいけないと思って、私なりに踏ん張り続けました」
でも、あるとき自分の中で張り詰めていた糸がプツンと切れた。
「気づいたんです。別にもう、遠野くんがミスをしても私が全部責任を被って謝ればいいんだ。それが私に課せられた仕事なんだ……って、思っている自分に」
私はすべてを自分自身が諦めてしまっていることに、一年半が経ってようやく気が付いた。
同時に、このままここにいたら、きっと私はどんどん自分のことが嫌いになる。何より、一刻も早く遠野くんから逃げ出したいと思ってしまった。
だから私は自主退職を申し出て、約四年間お世話になった会社を出た。
「辞める前日……部長には涙ながらに謝られました。これまで、野原ひとりに嫌な役回りをさせてしまって、本当に申し訳なかった。すべて、自分の至らなさが原因だって……。私に頭を下げる部長を見たら、私はもう何も言えませんでした」
本当は、文句のひとつくらい言ってやりたかった。
でも、できなかった。
そもそも、私がもっとしっかり遠野くんの指導ができていれば、こんなことにはならなかったのかもしれない。
教育係が私じゃなければ、会社が多くの不利益を被ることもなかったのかもしれないという思いが、少なからずあったからだ。
すべては、自分の力不足が原因。
自分のせいで会社に迷惑をかけてしまった……。
私は遠野くんが悪いと思う反面、自分のことも責めずにはいられなかった。