エリート外科医の灼熱求婚~独占本能で愛しい彼女を新妻に射止めたい~
「失礼します……」
もしかしたら、今回もそのパターンかもしれない。
そう思った私は、恐る恐るドアを開けて中を覗いた。
「え……」
すると、窓際に置かれた革のソファに、白衣姿の男の人が横になっているのが見えた。
もしかして、あの人が出前の依頼をくれた、近衛先生かな?
「あ、あの〜……。ご注文の特製チャーハンをお持ちしたんですけど……」
入口に立ち、再度声をかけてみたけれど、男の人が起きる気配はない。
よほど疲れているんだろうか。
スースーという気持ちよさそうな寝息まで聞こえてきて、なんとなく起こすのに気が引けた。
お医者さんって、忙しいとろくに寝られない日もあるっていうし。
だけど、困ったな。タツ兄ちゃんのときみたいに、テーブルの上に代金が置いてあるわけでもなさそうだ。
「うーん……。まぁでも、相手はお得意様だし」
このままチャーハンを持って帰ったら、あの頑固親父にまた小言を言われるかもしれない。
タツ兄ちゃんなら、こんなときどうするだろう。
悩んだ結果、私はチャーハンを医局のテーブルの上に置いて帰ることにした。