エリート外科医の灼熱求婚~独占本能で愛しい彼女を新妻に射止めたい~
「近衛先生、私──」
どれくらい、そうしていたのかはわからない。
いつの間にか私は近衛先生のキスに夢中になり、近衛先生の白衣を握りしめていた。
「先生……私も、近衛先生のこと……」
だけど、ようやく、ほんの少しだけ唇が離されたキスの合間に、私が想いを告げようとしたら……。
──ピルルルルルルルル。
予告なく、機械的な電子音が車内に響いた。
ハッと我に返ってお互いに目を見合わせた私たちは、ほぼ同時に近衛先生が着ている白衣の胸の右ポケットに目を向けた。
「……ごめん」
「い、いえ! 大丈夫です!」
「……はい、近衛です」
電話に出た近衛先生は片腕で私の肩を抱いたまま、眉間に深くシワを寄せた。
「わかりました、すぐに戻ります」
受話器の向こうの相手が『急患が』と言った声が聞こえた。
近衛先生が電話を切ったのを合図に、私は手早く足元に落ちていたココアと配達用のバッグを持った。
「すまない、急患が入った」
「は、は、はい! 聞こえてました! それじゃあ、私は帰りますね!」
そのまま私は素早く、車から降りた。
同時に、運転席側のドアも開く。
車越しに目があった瞬間、今更ながらに恥ずかしくなって、頬が紅潮したのがわかった。