エリート外科医の灼熱求婚~独占本能で愛しい彼女を新妻に射止めたい~
「ごめんなさい……。ちゃんと話せなくて」
「別にいいのよ。今言ったとおり、あんたももういい大人なんだし、話したくないこともあるでしょ。それに……私たちじゃなくても、百合がつらいときに心の支えになってくれる人もいるみたいだし。お母さんは安心したわ」
そう言うとお母さんは、とても穏やかな笑みを浮かべた。
両親は私が帰ってきてからずっと、心配してくれていたんだ。
お父さんも……。私に厳しい態度を取っていたのは、愛情の裏返しだったのかもしれない。昔から不器用な父だったし。そう考えると納得がいく。
「……ねぇ、お母さん。私、ここ数日考えていたことがあるんだけどね」
話すなら今しかない。
そう思った私は、近衛先生と車の中で話をした以降、ずっと考えていたことを思い切ってお母さんに打ち明けることにした。
「私の、今後についてなんだけど」
「百合の今後?」
「うん。私……栄養士になるために専門知識を学べる学校に通おうと思う」
「百合が、学校に?」
「そう。幸い、働いていたときに貯めた貯金を学費にあてられるし、ここから電車で一駅の場所に二年制の専門学校も見つけたから、春からはそこに通えたらいいなと思ってるんだ」
私は、太ももの横で握りしめた手に力を込めた。
──近衛先生と別れたあと、私は改めて、今の自分と正面から向き合おうと決めたのだ。