エリート外科医の灼熱求婚~独占本能で愛しい彼女を新妻に射止めたい~
「何より、それが自分自身のためにもなると思ったから。栄養士の資格を取ることで、自分の将来性も広がると思う」
「百合……」
「だから……本当にワガママだとは思うけど、あと二年だけ、ここに置いてもらえませんか。私、必ず栄養士になるから!」
そこまで言った私は、お母さんに向かって深々と頭を下げた。
栄養士になるためには、まず専門知識が学べる学校に通わなければならない。現段階では通信制の学校では資格を取得することはできないのだ。
だけど、さっきも言ったとおり、学費は貯金から賄えるにしても、ひとり暮らしをするだけの費用まで補うのは難しいのが現実だった。
「昼間は学校に通って、夜と土日はこれまで通りお店の手伝いをする。もちろん、アルバイト代はいらない。全部、私のここでの生活費に宛ててください」
もしかしたら、それではまかないきれないかもしれない。
でも、思いつく限り、それ以上の最善の選択は今の私にはなかった。
「二十六にもなって、甘えてばかりの娘でごめんなさい。でも、どうしてもやってみたいの。私、これでようやく前に進める気がするから」
「百合、あんた──」
「──お前の気持ちはわかった。だがな、一度決めたからには絶対に中途半端で投げ出すようなことするんじゃねぇぞ」
「え……?」
と、不意に低い声が聞こえて顔を上げたら、部屋の前に立っているお父さんと目があった。