エリート外科医の灼熱求婚~独占本能で愛しい彼女を新妻に射止めたい~
 

「お父さん……」

「だがな、ここでのアルバイト代は、お前のもんにしておけ。二十六にもなる娘が無一文じゃあ、親としての面目が丸潰れだからな」


 一体、いつからそこで話を聞いていたんだろう。

 お父さんはぶっきらぼうにそれだけ言うと鼻を鳴らして、さっさと踵を返してしまった。


「お、お父さんっ、ありがとう!」


 慌てて部屋を飛び出した私は、お父さんの背中に向けて力いっぱい叫んだ。

 私は本当に幸せ者だ。だって、自分の選択を応援してくれる家族がいる。

 そして、自分の道を選べる環境があるのだから、恵まれている。

 だけどそのぶん、弱い自分に負けずに頑張らなきゃいけない。


「良かったわね、百合。頑張んなさい。応援してるわ」

「お母さんも……本当に、ありがとう」


 私は笑顔で頷きながら、改めて決意を固めた。

 近衛先生にも今の話と、私が抱いた新たな夢を報告したい。

 私はこのあと近衛先生に会えることが、さらに楽しみになった。

 
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