エリート外科医の灼熱求婚~独占本能で愛しい彼女を新妻に射止めたい~
「あ、あと、必要なものは……」
カバンを持ってリビングに降りて考える。
幸い、ひと足先にお風呂に入ったお父さんは既に自室に戻って寝ているようだった。
「あら、百合、あんた……」
代わりにリビングでお母さんと鉢合わせ、一瞬だけ気まずい思いをする。
でも、それすら今は気にしている余裕はなくて、私が思いついた限りの準備をしたところで再び携帯電話のランプが光った。
【着いた】
たった一言。近衛先生らしいメッセージが、余計に身体に緊張を走らせる。
「お、お母さん、ごめん。いってくるね」
「はいはい、もしお父さんが気づいてもお母さんがなんとかしておくから。あんたは、後悔のないようにしてきなさいね」
こういうとき、母は偉大で頼りになる。
私は用意していたおろしたてのパンプスを履くと小走りで家を出た。
「あ……」
そうして、野原食堂の前に停められていた近衛先生の車を見て足を止めた。
私に気づいた近衛先生は車から降りてくると、助手席のドアを開けてくれた。