エリート外科医の灼熱求婚~独占本能で愛しい彼女を新妻に射止めたい~
「私も……。私も、まだ、帰りたくないです」
結局、私のその言葉がすべての合図だったと思う。
私の返事を受けとった近衛先生は、今度はとても色っぽく目を細めて微笑んだ。
「このまま、俺の家に行こう。今夜は百合を抱いて眠りたい」
返事をするより先に、車は走り出していた。
──視界の端に映った歩行者用の信号が、私の鼓動のようにチカチカと点滅していた。
*
「上がって」
近衛先生に連れてこられたのは、病院から車で十分ほどの場所にある駅近のタワーマンションだった。
地上三十八階建ての三十五階が近衛先生の自宅で、部屋から見える夜景がとてもきれいだった。
「わ……すごい……」
リビングルームは軽く三十畳はありそうな広さだ。
そこに四人がけのダイニングテーブルがひとつに、L字型の大きなソファとローテーブルがひとつずつ。
壁掛けのテレビに本棚、気持ち程度の観葉植物……と、どれもシックかつシンプルにまとめられた、近衛先生らしい内装だった。