クールな副社長はウブな彼女を独占欲全開で奪いたい
「白峰さんにもあるから、後でいいかな」

「私にも、ですか」

「できればお姉さんと一緒に食べてもらいたいな。今日、自転車を受け取ってくれているんだよね。そのお礼を込めて」

「そういえば午前中に無事自転車が届いたと、姉から連絡がありました。ありがとうございました」

「それはよかった。じゃあまた後で。いつもの場所で待っているから」

 車に乗らなければいいんだよね。私ではなく姉にという意味みたいだし、和菓子をいただいたら改めて送迎は必要ない旨を伝え、退散しよう。

「はい」と短く答えて、私はそそくさとその場を後にした。

 残り少ない業務を終えて、更衣室で着替えを済ませて駐車場へ向かう。めちゃくちゃ足取りが重い。

 雨はつい先ほど止んだばかり。

 今日に限って、私が車の前に着いても遥人さんは降りて来なかった。いや、今日だからか。

 仕方なく助手席のドアを開けて車内を覗き込む。

「あの」

「乗って」

「いえ、ここで」

「いいから」

 押し問答が続く。
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