クールな副社長はウブな彼女を独占欲全開で奪いたい
「どうした?」

 電話口から微かな声が流れ聞こえる。

 ふたりが仲睦まじく話す姿を見たくないので、窓外へ視線を走らせた。

 そこでふと思う。

 私、今なにを考えた……?

 自分でも信じられない気持ちで、隣の遥人さんを盗み見る。遥人さんは左手を立てて、『ごめん』と言った。

 胸が苦しくなった。呼吸がしづらくなって顔を伏せる。

 信じられない。伶香さんに失礼だ。

 背筋に冷たいものが走り抜けてぶるっと身体を震わす。

「その話の続きは後で聞く。人を待たせているんだ」

 自分について言われていると気づき顔を上げる。遥人さんは困ったように微笑んで私を見ていた。

 さっき抱いた気持ちを取り消したい。ほんの少しでも、伶香さんを裏切るような感情を抱いた私は心底最低だ。

 膿を吐き出すように息をついた私の耳に、結愛ちゃんの可愛らしい声が届いた。遠くの方から、どんどん近づいてくるように。

「……パ! パーパ! パ……はるくん!」

 最後の方はハッキリと聞き取れた。たしかに、パパと呼んだ。

 それを聞いて、胸をえぐり取られるような激しい痛みに襲われる。
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