クールな副社長はウブな彼女を独占欲全開で奪いたい
「気に入ってもらえてよかった。たまにぶらりと来て、このテラス席で本を読んで過ごしたりするんだ」

「それは絵になるでしょうね」

「小春は、おかしなことを言うね」

 涼しい顔をして笑う遥人さんは、自分がどれほど魅力を解き放っているのか自覚していない。

 この後、有名なかき氷のお店に行く予定になっているので、昼食は軽めにしてカフェオリジナルのブレンドコーヒーをいただいた。

 八月中旬の昼下がりは暑いだろうと懸念していたけれど、海風のおかげで涼しく過ごしやすい。

「そういえば、結愛ちゃんを川に連れて行ってあげられたんですか?」

「陸に反対されたんだ。川は水の流れが速いから危ないって」

「だったら、明日結愛ちゃんを連れてプールに行きます? さすがに急すぎですかね? でも明日を逃したら、私の次の土日休みが……」

「いいの?」

 言い終わる前に遥人さんが驚いた表情で私を見つめた。

「私はいいですけど、皆の予定が」

「すぐに確認する」

 そう言って、伶香さんに電話をかける。

 もう電話口から微かに漏れる声を気にしなくてもいい。それがすごく嬉しくて、胸がじわりと温かくなった。
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