クールな副社長はウブな彼女を独占欲全開で奪いたい
「昨日、妊娠検査薬を使ってみたんです。それで、陽性でした」

 嬉しくて目の奥に熱いものが込み上げる。

 不安げに瞳を揺らしている小春を優しく抱きしめた。

「小春、ありがとう」

 おそらく今、俺の目は涙ぐんでいる。それを見せるのが気恥ずかしくて、小春の首筋に顔を埋めたまま心を落ち着かせる。

「でも病院に行かないと、なんとも言えないですけど」

 俺とは対照的に、小春は俺の耳元で弱々しい声を落とした。身体をやんわりと離して顔を覗き込む。

「不安だよな。明日一緒に病院へ行こう。小春は早番だし、仕事が終わって病院に直行すれば間に合うだろう」

「でも遥人さんのお仕事が」

「一週間小春を送迎していたのを忘れたのか? それくらい平気だよ」

「それじゃあ、お願いします。実はひとりで行くのが不安で、姉についてきてもらおうかと考えていたんです」

「そういう不安は全部俺に打ち明けて。なんでも受け止めるから」

「……はい。ありがとうございます」

 小春はようやく安堵の表情を浮かべた。
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