クールな副社長はウブな彼女を独占欲全開で奪いたい
「食は細い方ですか?」

「あまり食べないかな。あの通り昔から華奢で。あー、でも、果物は好きだからたくさん食べるかも」

「果物ですね。私も好きです。果物がメニューにある時は勧めてみます」

「ということは、ここでもあまり食べていないのかな」

「いえいえ。食べられていますよ。ただもう少し食べてくれたら、私が嬉しいなってだけです」

 宝生さんの体調が悪いわけでもないのに、不要な不安を煽るのはよくない。この話はこれで終わりにしよう。

 でもこれまではご家族と会う時は必ず宝生さんがいたので、こういった話をするタイミングがなかった。

 ご本人を前にしてあれこれ詮索するのはよくない。だから遥人さんからいろいろ聞けてよかった。

 宝生さんもまだ利用されていないシアタールームや、フィットネスルームなどを案内する。

 ここの魅力をご家族の口からも伝えてもらえたらありがたい。

 緊張しながらも、遥人さんに説明を続けていると。

「あれっ、白峰さん。その人は?」

 歩行器を使いながら、湯川さんが和室から出てきた。
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