クールな副社長はウブな彼女を独占欲全開で奪いたい
「頭、熱いな」

 私が大量に汗をかいているのに気づいた遥人さんは、私の頭頂部に手をあてて呟く。

「陽射しを遮るものがないから、これで我慢していて」

 羞恥心で震える唇を噛んで目を泳がす。結愛ちゃんが自身の麦わら帽子に手をやって、私に被せようとする仕草をした。

 可愛らしい姿に胸がじわりと温かくなる。

「結愛。小春ちゃんには、ちょっと小さいかな」

 遥人さんがクスッと笑う。結愛ちゃんは「そっかあ」と残念そうにした。

「結愛ちゃんありがとう。私も明日からは、結愛ちゃんを見習って帽子被らないといけないね」

 結愛ちゃんは自分がお手本になったのだと気づくと、嬉しそうに表情を緩めた。

 よかった。やっと笑ってくれた。

 遥人さんに触れられているという延々と続くような時間が過ぎ、やってきたタクシーに乗って病院へ向かった。
< 29 / 165 >

この作品をシェア

pagetop