クールな副社長はウブな彼女を独占欲全開で奪いたい
 遥人さんの問いかけを無視して、伶香さんに目配せする。

「いいんですか?」

 伶香さんは「ん?」と首を傾げて微笑む。

「白峰さんがよければ、交換してあげて」

 本当にいいのだろうか。それともこれが大人の対応というやつ?

 私には分からない……。

 ふたりの言動に流されるまま、遥人さんと連絡先の交換を済ませる。

「なにかあったら、遠慮なくはるくんに言ってね。これでも頼りになる人だから。それじゃあ私たちはこれで」

「伶香。さっきみたいに走るんじゃないぞ」

「はいはい」

 呆気に取られている私を残して、伶香さんと結愛ちゃんは先に帰っていった。

「送っていくよ」

 遥人さんは私が左手に持っていたバッグをさらっと奪う。自然な動きに、驚きの瞬きが止まらない。

 大人の男性は、こんなふうに振る舞うものなの?

 さらには右腕をそっと優しく掴まれて、寄り添うように横に立たれた。

 ビクッと肩が跳ねる。鼓動が大騒ぎを始めて呼吸がままならない。

 なになに? 身体、近すぎない?
< 38 / 165 >

この作品をシェア

pagetop