クールな副社長はウブな彼女を独占欲全開で奪いたい
「介助する時、麻痺がある側に立つんだよね?」

 唐突な質問を受けて、なんとか返事をする。

「そうですね」

 もしかして私を介助しているとか、そういう感じ?

「ええっと。歩行の妨げにならないように、斜め後ろに立って、密着しすぎないように、寄り添うようにするんです」

「俺、近すぎ?」

「あー……はい。ちょっとだけ」

「そっか」

 空気を吐くような笑い声をこぼして、遥人さんは相変わらず密着したまま私の横を歩く。

 あれっ。伝わらなかった?

 どうしようかと頭を悩ませているうちに、病院の正面玄関を出てすぐにタクシーに乗る。

「明日は休めないのかな」

 遥人さんの呟きを拾って、うーん、と唸る。

「人手が足りていませんので。難しいかと」

「そっか、俺が口出しできることじゃないよね。こんな目に合わせてごめん」

「お願いですから、もう謝らないでください。むしろこんなによくしていただいて、感謝しています」

 相手が赤の他人だったら。ここまで親身になってくれていないはず。

「白峰さんは優しいね」

 不意に注がれた眼差しこそ優しくて、胸がキュッとなる。
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