クールな副社長はウブな彼女を独占欲全開で奪いたい
「本当に、明日からお願いしてもいいんでしょうか」

「いいよ」

 即答されて、こちらがグッと詰まる。

「伶香さんが困ったりしませんか?」

 なるべく失礼にならないように、言葉を選びながら会話を続ける。

「伶香が困るようなことは、ひとつもないと思うけど」

 よく分からないといった様子でいる遥人さんを目の当たりにして、この人は人タラシと呼ばれる類なのだと確信した。

 損得勘定という気持ちは微塵もなく、優しさを惜しまず差し出せる人なのだろうな。

 あまりにも拒めば、それは失礼にあたる。明日だけはお願いして、様子を見て明後日からの身の振り方を考えよう。

 奥さんの立場である伶香さんの存在を抜きにしても、入居者家族と個人的なかかわりを持つのはよくない気がするし。
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