クールな副社長はウブな彼女を独占欲全開で奪いたい
「よろしくお願いします」

 弱々しく頭を下げる。すると頭にポンッと遥人さんの手が乗った。

 なにか言われると身構えたのに、遥人さんは黙って私の頭をゆっくり撫でている。

 これは……ダメなんじゃない?

 胸の高鳴りは聞こえない振りをして、遥人さんの行動にこっそり顔をしかめた。

 その後、今日は結愛ちゃんとふたりでロイヤルライフを訪れていて、結愛ちゃんが電柱に止まっていたセミを見つけて走り出し、私と衝突しかけたのだと聞かされた。

 あの辺りは緑が多いから虫はよく見かける。

 遥人さんが白いシャツに黒のパンツ姿なのは仕事がお休みだからで、前回お会いした時は仕事終わりだからだったそうだ。

 週末に仕事をしているくらい忙しい人なのだろう。それなのに明日だけでも送迎をしてもらうことに、この時の私はただただ申し訳なく思っていた。

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