クールな副社長はウブな彼女を独占欲全開で奪いたい
 運転席から下りて彼女を迎える。

「お疲れさま」

「お疲れさまです。ありがとうございます」

 申し訳なさそうに頭を下げる姿に大きな壁を感じて、胸の辺りがもやもやする。

 早く気を許してくれないだろうか。

 願望を抱きながら彼女の手から荷物を奪い、助手席へ誘導する。肩が痛くて乗りづらそうにする腕を掴んで支えた。

「あ、すみません」

「ゆっくりでいいよ」

 昨日も感じたが、この細い身体でよくあんな体力仕事ができるな。

 感心しつつ、業務で打撲が悪化しないか彼女の身が心配になる。

 運転席に戻りふたりきりの空間になると緊張感が増した。

 おそらく彼女も緊張している。チラリと横目で様子をうかがえば、表情を硬くした姿が視界の隅に映った。

「肩の調子はどう?」

「痛め止めが効いているのか、昨日よりだいぶ楽です」

 別の角度から受け止めると、それは昨日よりましだがまだ痛みは十分にあるという意味。

「仕事以外で困っていることはない? 例えば買い物とか。重たいものは持てないだろう」

「そこは姉の助けがあるので問題ないです」

 少し声を大きくしたあたり、嘘は言っていないのだろう。
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