クールな副社長はウブな彼女を独占欲全開で奪いたい
「あの……なんと言っていいのか……」

 言葉を濁して、逃げ道がないかと脳みそを働かせる。

 彼は入居者さまのご家族。今後も顔を合わせるのだから、気まずい関係にはなりたくない。

「いきなり言われてもびっくりするよね。今日は俺の気持ちを伝えたかっただけだから。ゆっくり考えてもらえればいいよ」

 沈黙がしばらく落ちる。おもむろに遥人さんの手が伸びてきて、私の頬にかかった髪を払った。

 ドクンッと心臓が大きく跳ねる。

「あの?」

「この前ここに擦り傷があったから。もう綺麗になったね」

「え、あ……」

 傷を確認するために髪をどけたと分かっても、遥人さんの行動に過剰反応せずにはいられない。

「あ、あの。また連絡します」

 身を引いて遥人さんから距離を取る。少し驚いたような顔が瞳に映った気がしないでもないけれど、あまり確認せずに車から降りた。

 ドアを閉めてお辞儀をする。それから走り出したいのをグッと耐えて、いつも通りの歩調になるよう心掛けて建物の中へ歩みを進めた。

 ドキドキと激しく動悸が打つ。胸の辺りの服をギュッと握ってどうにか息継ぎをする。
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