クールな副社長はウブな彼女を独占欲全開で奪いたい
 出会った頃からすごく素敵な人だと思った。遥人さんのような人と一緒になれたら幸せだろうと胸を躍らせた。

 そう。最初から彼を特別な目で見ていた。

「自分が嫌になる」

 体育座りをして、膝に頭を埋める。

「引き返せてよかったじゃん。のめり込んだら、理性を失う時だってあるし」

「……そうだよね」

 遥人さんと過ごした時間はとても短い。さっき遥人さんが言っていたように、私たちはまだお互いにどういう人柄なのか知っていく段階だ。

 それなのに。水輝と別れた時以上に、心が泣き叫びたがっているのはどうして。

 ……私、疲れているんだ。

 短期間でたくさんのことが起こりすぎた。身体もだけれど、心もきちんと休めた方がいい。

 今日くらいはお酒を飲もうと、姉がテーブルに準備していた缶ビールに手を伸ばした。


< 95 / 165 >

この作品をシェア

pagetop