褒め上手な先輩の「可愛い」が止まりません
風紀検査とホームルームが終わり、午前中で学校が終わった。
今日は部活があるとのことなので、久しぶりに美術部に足を運ぶことに。
「もうね、怖くて途中から薄目で観てた」
「わかります! 直視できないですよね」
絵を描きながら雪塚先輩と夏休みの話で盛り上がる。
先月末、友達に誘われてホラー映画を観に行ったという。
だけど、観たことを心底後悔するほど怖かったそうで……。
一緒に行った友達は、その後数日間恐怖で熟睡できなかったらしい。
「もう2度とホラー映画は観ないと誓ったよ」
「ですね……」
先輩はというと、数日間食事がのどを通らなくなるくらい引きずったと。
ホラー映画は安易な気持ちで観るものじゃないな。
「この前西尾くんと出かけたって聞いたんだけど、草山さんから何も言われてない?」
「はい。今日トイレで会ったんですけど、挨拶しただけで何も言われませんでした」
そう返すと、先輩はホッとした顔を見せた。
実は雪塚先輩も兄と同じく、西尾先輩と話しただけで睨まれたことがあったそうだ。