褒め上手な先輩の「可愛い」が止まりません

「大切な人が苦しんでいたことに気づけなかったんだ。俺と付き合うとみんな悲しい思いをするんだよ」



地元から離れた高校に入ったとはいえ、中学時代のあだ名が知れ渡っている以上、また同じことが起こるかもしれない。

これ以上、自分のせいで人が傷つくのは見たくない。



「そんなに自分を責めるな。東馬は何も悪くない。悪いのはいじめたやつらだ」

「そう、だけど……」



ベッドから下りた景斗が、慰めるように肩に腕を回した。

ポンポンと優しく叩く手が胸をキュッと締めつける。



「もしも俺のせいで実玖ちゃんが嫌な思いをしたら……お前に合わせる顔がないよ」



引っ込み思案で男子が苦手だった実玖ちゃん。

過去と向き合って、少しずつ克服していっているのに。

今度は女子から嫌がらせを受けてしまったら……。



「前を向き始めているのを邪魔したくない。大好きだから、大切だから。もう傷つけたくないんだよ」



長い間、心の奥にしまいこんでいた恋愛への恐怖心を全て吐き出した。

この環境から離れない限り、自由に恋愛するのは難しいと思う。


俯いていると、肩に回っていた手にグッと力が入った。
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