褒め上手な先輩の「可愛い」が止まりません
──清水家に宿泊した後は、宿題とショーの衣装作りに追われながら残りの夏休みを過ごした。
そして、迎えた始業式の朝。
駅で須川くんと合流し、お互いに夏休みの話をしながら学校へ向かう。
「須川くんは夏休み何した?」
「特にどこにも行きませんでしたね。あ、でも猫を洗いました!」
にこやかに放たれたパワーワードに思わず2度見する。
犬じゃなくて、猫を……⁉
「ね、猫ちゃんをシャンプーしたの?」
「はい! 飼ってる猫が脱走しちゃって、家族みんなで捜して捕まえたんですけど、色んなところを歩いたのか、泥だらけになってたんです」
どうやら逃げ出した子が白猫だったらしく、汚れが目立っていたため、洗うことにしたんだそう。
でも猫って、水が苦手じゃなかったっけ……?
「嫌がられなかったの?」
「めちゃくちゃ嫌がられました。暴れまくってて、家族総出で洗いましたもん」
ハハハと笑う彼の腕には、うっすらと数本の引っ掻き傷の跡が。
須川家の苦労と猫がどれだけ嫌がっていたのかが目に浮かぶ。
慣れているんだろうけど痛かっただろうなぁ。
「先輩は何しましたか?」
「ずっと家で服作ってたから、旅行とか遠出はしなかったけど、実玖ちゃんと一緒に遊んだかな。あとは景斗んちに泊まったよ」