褒め上手な先輩の「可愛い」が止まりません

──清水家に宿泊した後は、宿題とショーの衣装作りに追われながら残りの夏休みを過ごした。


そして、迎えた始業式の朝。

駅で須川くんと合流し、お互いに夏休みの話をしながら学校へ向かう。



「須川くんは夏休み何した?」

「特にどこにも行きませんでしたね。あ、でも猫を洗いました!」



にこやかに放たれたパワーワードに思わず2度見する。

犬じゃなくて、猫を……⁉



「ね、猫ちゃんをシャンプーしたの?」

「はい! 飼ってる猫が脱走しちゃって、家族みんなで捜して捕まえたんですけど、色んなところを歩いたのか、泥だらけになってたんです」



どうやら逃げ出した子が白猫だったらしく、汚れが目立っていたため、洗うことにしたんだそう。

でも猫って、水が苦手じゃなかったっけ……?



「嫌がられなかったの?」

「めちゃくちゃ嫌がられました。暴れまくってて、家族総出で洗いましたもん」



ハハハと笑う彼の腕には、うっすらと数本の引っ掻き傷の跡が。

須川家の苦労と猫がどれだけ嫌がっていたのかが目に浮かぶ。


慣れているんだろうけど痛かっただろうなぁ。



「先輩は何しましたか?」

「ずっと家で服作ってたから、旅行とか遠出はしなかったけど、実玖ちゃんと一緒に遊んだかな。あとは景斗んちに泊まったよ」
< 188 / 264 >

この作品をシェア

pagetop