褒め上手な先輩の「可愛い」が止まりません
再び心臓が音を立てた。

先輩がきちんと説明して否定しているからか、今のところは、誰かに呼び出されたとかはない。


とはいえ、さっきみたいに怪しむ人も少なくはなく……。



「だよね~。もしかしたら気があるんじゃない?」

「かもね。下の名前で呼んでるし」



うぅ……やめて。
もうこれ以上は聞きたくないよ……。



「実玖」



ふいにポンと肩を叩かれ、隣を見ると、兄が心配そうに顔色をうかがっていた。



「な、何?」

「眉間にシワ寄ってるぞ。これつけるか?」



差し出してきたのは、いつも勉強する時に使っている耳栓。

え、なんでお兄ちゃんがこれ持ってるの。
まさか、部屋に忍び込んだ……?


疑惑の眼差しでジロッと見つめる。



「あ……別に部屋漁ってないからな。机の上にあったから持ってきただけ」

「……ん。ありがと」



耳栓を受け取り、装着する。


外だから自動車の音は若干聞こえてくるけれど、だいぶ話し声は遮断された。

お兄ちゃんも意外と気が利くところあったんだな。
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