褒め上手な先輩の「可愛い」が止まりません

「だから、着なくなった服とか布の切れ端があったら手芸部に持ってきてほしい」

「オッケー。月曜日に持ってく」

「わかりました。友達にも伝えておきますね!」

「ありがとう! よろしくね!」



────
──



「本当に良かったのか?」

「何が?」

「モデルの話。一緒に頑張ろうとは言ったけど……お前、人前に出るタイプじゃないから、もしかしたら無理してるんじゃないかと思って」



先輩を見送った後、兄から今一度確認された。


お兄ちゃんの言う通り、私は人前に立ったり目立ったりするのが苦手なタイプ。

そんな私が大勢の人の前で歩くんだもん。そりゃ心配するよね。


でも……。



「私は先輩の気持ちに答えたかったから引き受けたの。だから無理してないよ」

「……そっか」



自分の気持ちを正直に伝えると、顔色をうかがっていた兄の表情が少し和らいだ。



「わかった。何かあったらすぐ俺か東馬に言えよ?」

「はーい」



もう、相変わらず過保護だなぁ。……でも、ありがとう。

部屋に入る兄の背中に心の中でお礼を呟いた。
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