王太子殿下と王宮女官リリィの恋愛事情


「なんなの、あの高慢で傲慢な女!リリィは殿下の恋人なのに。自分から挨拶どころか呼びつけるだけでもありえないのに。あの態度!ありえないでしょ!!」

またマルラが噴火してる……最近ストレスすごいよね。ごめん、マルラ。

マルラが憤ってる内容は、実際わたしにはどうでもいい事柄。

それより気になったのが、公爵夫人のサロン。
上流階級の女性の間では上位の女性がサロンを主催し、招待客が社交を楽しんだりお茶や食事をしたりする。
わたしも王宮にいた時には王后陛下のサロンに招待され、何度かお邪魔した。
王后陛下のサロンはどちらかと言えば内輪のイベントみたいなもので、ティータイムがベースになり静かに語らったり音楽や詩の朗読を楽しむような静かで知的なもの。

対して、公爵夫人のサロンはまったくの真逆で派手すぎる。高価な贈り物の交換や、禁止されているはずの賭博ゲーム。お世辞や自慢話の応酬。フィアーナから凄腕のシェフを招き、贅を尽くした高級料理の数々。酒宴としか思えない騒ぎのパーティ。合法スレスレの怪しげな香を焚いていたりと、まったく品や知性とは縁遠いもの。
どうやらアリス様の服装や侍女はアリッサ様の趣味みたいだ。

(だけど……レッドラン公爵にはこんなに贅沢できる財力はあった?領地からの収入とアリッサ様へのフィアーナからの支援を合わせても、こんな浪費を続けられるほどの財産はないはず)

図書室司書のキリさんには事前に様々な情報をもらっていた。彼はあれでも一応伯爵だから、様々な情報源がある。

“レッドランにはキナ臭い噂がある”ーーと。教えてくれた。


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