王太子殿下と王宮女官リリィの恋愛事情

「原因?」
「あっ…な、何でもありません。た、たぶん…今朝食べたものに当たったんだと思います!ずっと調子が悪いのはそのせいで…」

咄嗟に嘘をつく。これで誤魔化せると思ったのに、殿下はなぜか不機嫌さを隠そうとなさらなかった。

「リリィ、嘘をつくな」
「う、嘘なんて…」
「おまえが嘘をつく時、無意識に手を合わせるクセがある」
「…え、あ!」

殿下に指摘されて、初めて気付いた。両手の指を合わせギュッと握りしめていて……自分にそんなクセがあったなんて、全然知らなかった。

「それから瞬きがわずかだが増え…気になるところに触れる…腹部に何か問題でもあるのか?」

観察眼が鋭い殿下に、ため息が出そうになる。優秀なのはわかっていたけれど、こんな時に発揮しなくても。

「……大丈夫です。おそらく健康的な理由ではありませんから。まだハッキリしないので……分かり次第きちんと報告します」
「……?そうなのか」

やっぱり殿下には事態が想像ができないから、ちんぷんかんぷんみたいだ。わたしだって惑わすつもりはないけど……。

ここは、もしかしたら敵がいるかもしれない危険な場所。情報を全て知らせる義務はない。

(……殿下を、護らなきゃ。わたしの恩返し……サラさんに学んだ魔術……絶対活かしてみせる)

たとえ、自分の命に代えても。絶対に殿下を護るんだ。





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