王太子殿下と王宮女官リリィの恋愛事情
「リリィ」
王太子殿下は真面目な顔をされるとベッドの前で膝をつき、わたしの手を取り真剣な眼差しを向けてきた。
「改めて言わせてもらう……オレは、おまえが好きだ」
「……!」
呼吸を忘れるほどに、殿下の言葉に驚いて……そして。
じわじわと込み上げてきたのは…喜び。
まさか、まさか…殿下が口にされると思わなかった。
今まで仄めかしや思わせぶりな態度はあったけど、わたしに伝えることはないと諦めてきた。
でも……。
メイフュ王太子殿下は、きちんとわたしと向き合って……わたしに伝えてくれた。
「……何度も、悩んできた。おまえに伝えていいものか、と。オレの言葉がおまえを縛ってしまわないかと。だが、おまえはオレに何度も伝えてくれた。このままではオレは不甲斐ない男になってしまうからな」
そして、王太子殿下はわたしにもう一度ハッキリと伝えてくださった。
「リリィ、オレはおまえが好きだ。オレの隣にいて、ともに歩んでほしい。オレは、おまえを一生護りたい」
王太子殿下の触れた指から、ぬくもりだけでない暖かさがじんわりと広がっていく。忙しないときめきが心地よい。
どうして、幸せだと涙が出るんだろう?
「はい……わたしも、メイフュ王太子殿下が好きです……一生、そばにいていいですか?」
そう答えた瞬間、息苦しいほど殿下に抱きしめられた。
「ああ…!もちろんだ。一生そばにいてくれ」
そして王太子殿下がわたしの左手薬指にはめたのが、古くても歴史を感じさせる二重の指輪。
「ノプット王家とノイ王国の王家に伝わる指輪を作り直したもので、母上から託されたものだ。リリィ、おまえにと」
「……王后陛下が……」
王后陛下が、わたしを認めてくださる…
嬉しくて、また涙が流れた。