王太子殿下と王宮女官リリィの恋愛事情
ある意味地獄、の王太子殿下からの甘い罰は1時間以上続いて……。
額に青筋を立てたマルラとあきれ顔のカインさんが部屋の外から止めなきゃ、どうなっていたか…想像するのも怖い。
ベッドの上でクタクタのわたしを見たマルラはやっぱり、エロ王太子!とキレた。
「少し寝かせてやってくれ。私は公爵と話があるから少し離れる」
上機嫌になった王太子殿下は、他の侍従や護衛を伴って部屋を出ていかれた……というか、ここ…わたしに用意された部屋のはずでは? なぜ、王太子殿下が入り浸ってらっしゃるんだろう?
とはいえ、わたしもぼんやりしてる訳にはいかない。有事のために、少しでも魔術の練習をしておきたい。
いざ戦いになった時に力も身を守る術を持たないわたしは、きっとみんなの足手まといになる。
だから、少なくとも自分の身やマルラや王太子殿下を守れたら。
今のところわたしは風が一番操り易い。だから、たくさん練習したいけど。室内だとどうしても制限されてしまう。
「ね、ちょっと魔術の練習をしたいんだけど…外で、はダメかな?」
『ダメだよ(です)!!』
声がハモったマルラとカインさんに、仲良く反対されてしまった。
「ここは、リリィが狙われる可能性があるんでしょ?危ないよ」
「マルラちゃわんの言うとおり!かわいいかわいいボクのマルラちゃわんの…ぼげっ」
マルラにやたら色目を使ってたカインさんは、彼女に笑顔でテーブルを叩きつけられ、完全に沈黙した。
「……ほんッと、気持ち悪いんですけど」
「マルラ、やりすぎじゃない?」
「いいの!この害虫、道中の宿泊施設でも“ご主人同士が仲良ししてるなら、ボクたちも仲良くしようよ〜”とか寝ぼけたことほざきながら、何度も夜這いしてきたんだよ。永遠に寝ていてほしいくらいだわ」
荒ぶるマルラ…それで日中もかなり苛ついてたわけね…。
「ごめん、気づかなくて…」
「い、いいよ!リリィは王太子殿下と仲良くしてて欲しかったし。どうにかできたからいい…けど、この万年発情男を拘束できたらもっと楽なのに…」
マルラがため息と共に出した言葉で、ピンと閃いたことがあった。
「マルラ、ちょっと試してみたいことがあるんだけど…」