王太子殿下と王宮女官リリィの恋愛事情


また朝まで散々玩ばれたわたしは、起き上がることができなくて。マルラが鬼の形相で殿下を睨みつけてる…こ、怖い。

「今日は、砦に向かう。リリィも連れていくから支度しておけ」
「承りました…が。リリィは歩くのもつらそうです。どなたのせいかは申し上げませんが!せめて朝まで寝かせてくださいこのエロ王太子…というのは冗談ですけどね!」
「それは困ったが、オレが抱いて移動するから問題あるまい?」
「オホホホ。悪い御冗談を。またエロ王太子になるのは勘弁してくださいよ。もっとリリィの体を考えてくださいよ(色ボケ王太子が。色情猿が)」

……王太子殿下に対するマルラの辛辣な心の声がだだ漏れなのは気のせいかしら?

それはともかく……王太子殿下が砦に向かうのは、昨夜遅くに急使が公爵邸に届いたから。

“フィアーナ側より急襲あり。師団の半数壊滅。援軍を請う”ーーと。

予てより警戒し準備を怠らなかったとはいえ、軍を動かすとなると着の身着のままで飛び出せるわけじゃない。訓練を積んだ軍人でも準備は必要だし、更に編成した通りに動かす必要がある。

司令官として王太子殿下が、副司令官としてカインさんが軍を纏めて進軍を指揮する。


王太子殿下はひとまず砦をまっすぐには目指さなかった。
軍を二手に分け、更に別の機動隊を編成する。

その中で足が速く隠密行動が得意な者に先遣隊を任せ、最短距離で砦へ向かわせたけれども。

「いいか。おまえたちの任務は情報収集だ。決して無理な行動をするな。私は誰の命も惜しい。決して死ぬな!」

王太子殿下は、最大の目標を“一人も欠けず生き延びることだ”と、皆に命じた。


< 120 / 158 >

この作品をシェア

pagetop