王太子殿下と王宮女官リリィの恋愛事情
「あの、ありがとうございます…助かりました」
ペコリと頭を下げてお礼を言うと、「いいのよ」とローズさんは笑う。
「私は元々戦士だったから」
道理で女性にしては筋肉がついてる感じがしたんだ。とは言っても筋肉隆々というわけじゃなく、鍛え抜いて無駄な肉がない研ぎ澄ました刃のような印象だ。
「二人を護れてよかったわ」
ローズさんは革の手袋を外すと、そっとわたしのお腹に触れた。
「メイフュの子ね」
「……はい」
サラさんに雰囲気が似てるからかな?ローズさんには素直に認めることができた。
「よかったわ…メイフュもやっと過去を振り切れたのね」
やっぱり、ローズさんは王太子殿下をよく知っていそうだ。彼女に訊いてみたかったけど、今はそれよりもアリス様と屋敷の人たちを全員救出して、そして“闇”をどうにかしないと。“闇”の気配がだんだんと濃く大きくなってる…。このままだと、近隣に広がって最悪な事態が起きる!
わたしが慌てて“闇”の方へ走ろうとすると、ローズさんに腕を掴まれ止められた。
「は、離してください…!“闇”が広がる前に、なんとかしないと!!」
「…やっぱり、あなたにもあの“闇”が視えているのね」
ローズさんはキッと“闇”を見据え、わたしにこう告げた。
「一人ではどうにもならないわ…でも、私も協力する…いえ、逆ね。私が協力してもらうんだわ。結局、今回は私の国の不始末だから…お願い、リリィ。私たちに協力してほしい。“闇”が広がる前に、皆で浄化しましょう」
命の恩人であるローズさんにそう言われたから、一も二もなく協力を快諾した。
「はい!わたしでよければ喜んで!」
一人じゃない。その事が心強くて、現金にも気持ちも強くなれた。