王太子殿下と王宮女官リリィの恋愛事情
「はい、リリィの分ね」
「……どうも」
ローズさんが簡易的なマットを下に敷き、携帯のコップに注いだお茶と乾パンにチーズを分けてくれた。ちなみに火は使ってない。地下だし。
というか…穴があったら入りたい。
「……」
アリス様は手にした食料をぼんやりと見つめてる。そりゃそうだ。死にたいなんて言ってる人に食欲なんて……。そう思ったのに。
くぅ、とアリス様のお腹が小さく鳴った。
「……こんな時に…お腹が空くなんて……」
自虐的な笑みを浮かべたアリスさんに、わたしは咄嗟に話し掛けた。
「あの……アリス様の…体が生きたがってるように思います」
「……わたくしの?」
訝しげな眼差しを向けられ、必死になって言い募った。
「はい!心と体は密接に関係してますが、別に生きているとも思うんです。病は気からと言いますが、体が生きようとしてるなら殺しちゃだめです。とにかく、今は食べて休んでください。後のことはその時に考えればいいんです!」
思いつきをただ言葉に出しただけだから、めちゃくちゃだ。こりゃ駄目だ、と思いながらふと思い出しその名前を口にした。
「それから…アリスさんには、まだエリアさんがいらっしゃるじゃないですか!エリアさんは火傷を負いながら、あなたを助けてくれって助けを求めてきたんですよ」
「エリアが…!?」
名前を聞いた途端にアリスさんの瞳に光が戻り、前屈みになって詰め寄ってきた。
「火傷したエリアの容態は…?」
「大丈夫です。手当てが終わって眠ってました。命に別状はありませんよ」
わたしの情報にほっとしたのか、アリス様は「よかった」と呟いた。