王太子殿下と王宮女官リリィの恋愛事情
着いた先では、メイフュ王太子殿下がローブを着た緑髪の男性とともに、強大な“闇”と戦ってらした。
緑髪の男性はおそらく、ファニイ女王陛下の夫であるロゼフィン王配殿下だ。
地底湖の水は完全に干からび、岩壁に刻まれた偶像が露出してる。その前に巨大な魔法陣が描かれ、中心からは“闇”が際限なく噴き出し続けていた。けれど、ロゼフィン殿下が展開した魔術で辛うじて抑えているように見える。
ドーム型に閉じ込められた“闇”の中心には、下半身がヘビの異形と化した人の姿があった。
「ロゼフィン、手伝うわ!」
「ファニイさん。お願いします!中心を集中的に狙ってください」
ファニイ女王陛下がロゼフィン王配殿下に駆け寄り、二人は協力して“闇”に立ち向かう。呼吸の合った攻撃は、さすがご夫婦と言ったところ。
お二人の協力でわずかに“闇”が緩んだ隙を突いて、わたしも王太子殿下へと歩みよった。
「殿下…!」
無事な姿を確認できて涙が滲んだけど、剣を振り終えた殿下はこちらを向き、厳しい顔をされた。
「リリィ、なぜ来た!?待っていろと言ったはずだ」
「……ごめんなさい……でも、どうしてもお助けしたかったんです」
「……オレは、オレ自身よりおまえが遥かに大切だ。おまえを護りたい…なぜ、それがわからない!?」
王太子殿下がお怒りになるのも無理はない。殿下との約束を破った以上に、わたし自身を危険に晒してしまったから。
何のために殿下が危険な戦いに身を投じたか解らなくなる……殿下の勇気ある行動を否定する行為なんだ。だから殿下はお怒りになった……わたしを本当に大切に思われてるから。
「すぐ、ここから去れ!」
「……メイフュ殿下!お待ち下さい!!」
殿下はサラさんのペンダントをわたしの首にかけ直すと、そのまま帰そうとするけど。アリス様が殿下に意見をした。
「リリィさんはわたくしの侍女を助けたばかりでなく、罠と知っても侍女の訴えでわたくしを助けに来てくださったのです。
そんな勇気ある女性のお話を聞かず、一方的に叱責なさるのはどうかと思いますわ」