王太子殿下と王宮女官リリィの恋愛事情

公爵夫人の言葉が…心地よく響く。

3つでおばあちゃんが死んで…雪の中をひとり森の中で彷徨った。

寒くて…冷たくて…ひもじくて…
何日も食べ物がなくて。雪を食べて…体が冷えて死にかけた。どうしてもお腹が空いて…木の皮を剥がして口を血まみれにしながら食べた。
誰も、助けてくれなかった。

『そうさ…王太子なんて暖かい場所でぬくぬくとお腹いっぱい食べてあたたかな布団に包まり安全に寝てた。なんの苦労も知らず…そんな人間と、本当に解りあえると思うのかい?所詮、違う人間さ。永遠なんてない……飽きられて棄てられるのがオチさ!雪の日に棄てられたようにね!』

そう…か。
王太子殿下は…やっぱり違う人間…
飽きたら棄てられる。

わたしは…親からすら棄てられた人間だもの……。

“闇”が、わたしの身体を満たしていく。
心地いい……
こんなに、気持ちいいんだ。
なんだか…眠い……。

『そう、リリィ…いい子ね…そのまま身を委ね、お眠りなさい。次に目覚めた時は素晴らしい世界があなたを待っているから…』

そう…眠たい…眠らせて……。

ゆっくり、ゆっくりと堕ちていく……

ゆらゆらと心地よく揺蕩う中で、瞼を閉じようとした。




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