王太子殿下と王宮女官リリィの恋愛事情
どこからか、ざわざわと声が聞こえてきた。
(うるさい…静かにして)
「リリィ…」
(うるさい…)
「リリィ、寒いの?熱はないわね…」
(えっ…この声…)
「しっかりね!あんたなら大丈夫だよ」
(…クレア姉さん…?)
わたしのなかに突然響いてきた、声。
「苦労したんだね、リリィ。よしよし」
(……マルラ)
「これであたしたちは友達ね!リリィももう遠慮なんてなしだよ」
(そうだ…マルラは…初めての…友達)
「リリィを侮辱なさらないでください!彼女はあたしの自慢の友達なんです」
(いつもいつも…わたしのそばにいてくれた)
「大丈夫、きっと殿下はリリィを受け入れてくださるよ」
(わたしの…大切な友達……)
「リリィ、つらい時はいつだって帰ってきなさい。あなたはいつだってわたくし達の家族ですもの」
(……院長先生…は…わたしを初めて抱きしめてくれた…)
「もっともっとリリィお姉ちゃんと遊びたいもん!お話したいもん!」
(キャンディ…わたしもだよ。わたしももっと孤児院のみんなと…)
「…あんたは、悪くない」
(カインさん…)
「部下のサラを救って下さった勇気あるお方だ」
(そう…かな?わたしがやった事は…無駄じゃなかったの?)
「リリィ様がわたくしの“闇”を浄化してくださったお陰で、わたくしは新しい人生を歩めるのです。ありがとうございます」
(サラさん…本当に、よかったの?)
「…今まで、頑張ってきたのね、リリィ」
(…王后陛下…)
「リリィ、あなたはとても強い女性だわ」
(……違います、王后陛下…わたしは…本当はとても弱いんです…)
「けれど、誰かを頼ることも時には必要だと思うの」
(頼る…誰を?)
「だから、どんどんメイフュに甘えてあげて。男性は好きな女性に頼られるのが生きがいだったりするものよ」
「母上!」
(…メイフュ殿下…のお声だ)