王太子殿下と王宮女官リリィの恋愛事情
「アリス様、合図をしたらそのペンダントをお母様に向けて投げてください!」
「えっ、これを!?」
サラさんに託されたペンダント。それは、“闇”を浄化し封印する力もあった。
だから、最後のひと押しで公爵夫人のなかの“闇”を封じる鍵にする。
「はい。お母様を助けるために協力いただけますか?」
そう問いかけると、ペンダントを手にしたアリス様は力強く頷いた。
「わたくしが出来る事ならば…やります!!」
魔法陣が全ての“闇”を呑み込むほど強大になっていく。
わたしとメイフュ殿下で残りの“異形のもの”を討伐し、ファニイ女王陛下とロゼフィン殿下が“闇”を封じる手伝いをする。
お二人ほどの魔力がないから、直接手助けはできない。でも、魔法陣から漏れ出した“闇”を浄化することはできた。
どれだけの時間が過ぎただろう。
みんなの体力が限界に近づいた時、それは訪れた。
「アリス様、ペンダントを!!」
「お母様!助かって!!」
わたしの合図を待っていたアリス様が、全力でペンダントを投げる。それは不思議なことに、公爵夫人の首にぴったりとはまった。
『ぐあああぁあ!!』
公爵夫人は凄まじくもがき苦しみ、周りに“闇”が噴き出そうとする。
けれど遂に魔法陣の力が公爵夫人にも及び、その身に宿っていた“闇”は浄化され、ペンダントがカギとなり封印された。
「……封印!!」
ロゼフィン殿下がそう叫ぶと、空間が裂け魔法陣ごと“闇”が吸い込まれていく。
そして……“闇”は、完全に消滅した。
「お母様…!」
アリス様が駆け寄った先には、公爵夫人が倒れていて。
けれど、“闇”の代償か…彼女の両足は…失われていた。
「アリス…ごめんなさい…こんな母で…ごめんなさい…」
「いいの、お母様…これからは二人で…生きましょう…わたくしはお母様の足に…ずっとおそばにいます…」
二人は、ようやく抱き合えた。
本当の、親子として。
こうして…国境を揺るがせた事件は終わりを迎えた。