王太子殿下と王宮女官リリィの恋愛事情
エピローグ〜ずっと、そばに。
王宮にある大広間の両端では諸臣や貴族、有力な豪族や上位の官が揃う。
緋色の絨毯の先の玉座には、国王陛下ガラザ2世陛下とコウ王后陛下が鎮座ましてらっしゃった。
わたしの前に現れた国王陛下の代理である大臣が、しゅるりと巻物を広げる。
緊張し頭を垂れるわたしの前で、朗々と宣旨が読み上げられた。
「リリィ・ファール」
「はい!」
「国境防衛戦及び公爵家による陰謀事件の解決に尽力した。この度の功績により、貴殿を第2位…ファール公爵家の爵位を与え、王太子妃へ叙する!」
静かなざわめきが広がっていくけれど、わたしは…もう遠慮しない。
王太子殿下のそばにいるために、必要ならば掴むだけ。
「……謹んで、お受けいたします」
わたしが深々と一礼をすると、国王陛下は頷かれた。
「うむ、此度の戦功…大儀であった。そなた以上に王太子妃に相応しき者はおるまい。皆、よいな!妃はリリィ・ファールへ選定された。異議がある者はこの場で唱えよ!」
国王陛下の朗々たる宣言に、誰ひとり異議が出なくて。
その日わたしは女公爵家の爵位をいただき、正式な王太子妃へと選定された。