王太子殿下と王宮女官リリィの恋愛事情
初日と一夜

世界一の大河であるルシュル川沿いに建国されたノイ王国。大海ベルガー海を望みゴネバス大陸の入口にあたる交通の要所に位置しているにも関わらず、首都オレバは他国の侵略を受けたことがない奇跡の都。

オレバを分割するように真ん中をルシュル川が流れ、その間をぬうように王都のほぼ中央に位置するのが、現国王陛下ガラザ2世がおわしますガラバス宮殿。自国で産する白き磨き石と大理石やはんれい石がふんだんに使われ、黄金色の飾り漆喰やウゴス産の繊細なステンドグラスや北国の陶器で飾られる。
天井はカブレラ式と呼ばれる六角形の円蓋が特徴の、流れるようなデザインが美しい建物だった。

政治の中枢である大宮殿を中心に、歴代の国王陛下が増築を繰り返したため、各施設は放射状に点在。それでもルシュル川の水を引き込んだ噴水を中心に、豊富な水を活かした広大な庭園で調和が取れていた。

交通の要所だけあって、オレバでは国際色豊かな人々がいて。城下町では夜でもお祭りのような賑わいらしい。

とは言っても、わたしたちは観光に来たわけじゃない。働きに来たんだから、と気を引き締める。

やがてガラバス宮殿に到着し、車どまりで馬車から降りた時。大宮殿のあまりの大きさと荘厳さに圧倒され、言葉を出すことさえ忘れた。

「ひ…ひぇえ…な、なんかすごいなあ。あたし、足が震えてきちゃったよ」
「う、うん…わたしも」

マルラがガタガタ震えてるのも仕方ない。だって…想像以上に立派で…とにかく素晴らしい場所だったから。

こんなところで自分が働けるなんて、まるで夢のようで信じられない。

< 15 / 158 >

この作品をシェア

pagetop