王太子殿下と王宮女官リリィの恋愛事情
「リリィ、おめでとう!本当に王太子妃になれたんだね」
「うん…自分も信じられないよ」
王太子妃になったわたしは、王太子宮の正妃の住み家小宮(プチ・パレス)を正式に賜った。
マルラが王太子妃付きの女官長に叙され、一緒に居られるのはよかった。
「あ、でも…リリィはもう女公爵だし王太子妃殿下だよね。こんなタメ口きいちゃ失礼かな?」
マルラの気遣いに苦笑いして、わたしは首を横に振った。
「ううん…公的な場以外は今までと同じでいいよ。公爵の爵位だってレッドラン公爵家が廃されたからいただけたものだし…」
「…そうね。アリスさん…可哀想だものね」
マルラが同情したようにもと公爵令嬢のアリスさんは王都から離れ、働きながらお母様の面倒を見てる。公爵はあの戦いで亡くなってたから。
でも、乳母エリアさんの伯爵家を頼れる分ましだろう。
以前いただいたお手紙には、お詫びとお礼と毎日穏やかに暮らしてる旨が書かれていた。
アリスさんのお母様は罪を悔い、ボランティアに精を出しているらしい。
きっと、これから失われた時間を取り戻すんだろう。二人に会えることはないかもしれないけど…どうか幸せに、と祈った。