王太子殿下と王宮女官リリィの恋愛事情


「メイフュ、リリィ。結婚おめでとう!」
「ご婚姻おめでとうございます。末永くお幸せに」

フィアーナ王国女王であるファニイ陛下と、夫のロゼフィン王配殿下もお祝いに駆けつけてくださった。国境防衛戦での両国間の和睦のためでもあるけど、わざわざお越しくださって嬉しい。やっぱりあの戦いは特別なものだったから。

「いえ、わざわざ御御足をお運び頂きまして、ありがとうございました」
「そう堅苦しくしなくていいわ。共に戦った戦友じゃない」

わたしの挨拶にふふっと笑ったファニイ陛下は、身体にぴったりフィットするゴールドのシンプルなラインのドレス。余計な装飾が無い分、彼女の女性的なシルエットがとても艶めく。

「そういえば、あんたたちどうして公爵邸にいたんだ?仮にも女王の身で、無謀だろう?」

メイフュ殿下が二人に疑問点を訊ねた。そういえばそうだった。女王陛下と王配殿下という国のトップが、国境近くとはいえわざわざ異国に潜入していた事が。危険極まりないよね。

「“闇”に対応できるのが、わたくし達しかいなかったからです」

ロゼフィン殿下が、真相を訥々と語ってくださった。

「レッドラン公爵と繋がりのあるフィアーナの副王……今は廃しましたが……が、良からぬ企みをしているとかなり以前から掴んではいましたが…対処のため特殊部隊や魔術師を何人も送り込んではいたのです。ですが、行方不明が多発し無事帰ってきても廃人同然。そのうちに副王と公爵夫人の陰謀を突き止めましたが、すでに時間がなくやむを得ずわたくしどもが潜入いたしました。かつての大厄災クラスの事件が起きれば、更に対応できるのが大厄災に遭遇した経験のあるわたくしどもしかいませんでしたので」

「そうか…そうだな。今回は未然に防げたが、大厄災が再び起きたら世界が危機に陥ってしまうからな」

メイフュ殿下もかつての戦いを思い出されたのか、複雑なお顔になる。
わたしは当時のことはわからないけど、きっと想像以上に大変だったに違いない。


< 153 / 158 >

この作品をシェア

pagetop