王太子殿下と王宮女官リリィの恋愛事情
「公爵夫人について処罰はあるのか?そちらの副王は罪人として捕まっただろう」
「公爵夫人はそちらで死罪扱いされたでしょう。こちらとしてはそれ以上求めないわ。副王は塔に終身閉じ込める刑罰を受けた。一生牢獄に幽閉ね」
メイフュ殿下のもうひとつの疑問に、ファニイ陛下は淀みなく答えられた。
「……女としては、やるせない気持ちね。陰謀の源で怨みの元になった公爵夫人の深い傷は容易に癒せなかった……せめて、そういった女性が少しでも減るよう努力するしかないわ」
「……はい」
わたしも、女もだから解る。自分の身に同じ事が降り掛かったら…何も恨まずにいられるか?と。
わたしが無意識のうちにお腹を庇うように両手を当てると、ファニイ陛下は難しい顔を和らげた。
「確か、安定期に入ってたわよね?」
「はい。ちょっとずつ動くのを感じます」
わたしが頷くと。ファニイ陛下は微笑まれる。
「……こうして新しい生命が生まれてく……この子達が幸せであるように、頑張らないといけないわね」
「はい」
母親になろうとしている今、驚くほど考えが変わった部分がある。
それは、生まれて来る子が幸せであってほしいこと。自分のようなつらい思いや悲しい思いはしてほしくない…と。
「そうだな。オレもなんとなく解る…父となると、これだけ変わるのかと驚くくらいだ」
メイフュ殿下もわたしの手の上から大きな手を重ねてくるから、ドキッと心臓が跳ねてしまう。キュッと掴まれた手はあたたかい…。
「我が子が幸せであれ…とオレも願う」
「じゃあ、拗ねて何度も家出なんてしないように素直な子に育てないとね」
ファニイ陛下がウインクしながら暴露され、わたしが思わず「え、一度きりじゃないんですか?」と口にすると、メイフュ殿下はほんのり頬を赤らめて「ガキだったんだよ、もうしない」とおっしゃるから。微笑ましい笑いが広がった。