王太子殿下と王宮女官リリィの恋愛事情
まだ肌寒い2月。ノイ王国第2位の王位継承権を持つ王子が生まれた。
「あ、フェイトこっち見たよ!」
「ずるい!わたしも!フェイト、ほら〜お姉ちゃんですよぉ」
「イマ姉上、フェイトにとって姉上は“おばさん”でしょう?」
「なに言ってるの。まだ11歳のレディがおばさんなんて失礼だわ!ね、フェイト。わたしはお姉ちゃんですからね…あ、フェイトが笑ったわ!」
春の小宮(プチ・パレス)の中庭で。叔母や叔父になるイマ王女殿下とフィフス殿下はもうフェイトにべったりで、今から親馬鹿ならぬ叔父叔母馬鹿にならないか心配。
4月。わたしが王宮にきてちょうど1年。つい先日フェイトの洗礼もあり、わたしとメイフュ殿下の結婚式も盛大に執り行われた。
「ほらほら、王女、王子様方。そろそろ退出のお時間です。教育係が角を生やしていますよ」
女官長のマルラがそう言うと、フィフス殿下はちぇ!と口を尖らせた。
「マルラ、最近ミレイに似てきた!」
「似ていて結構!では、ミレイ様を真似て今度からおやつは出さないようにしましょう」
マルラがにこやかに言うと、フィフス殿下はうっ!と言葉に詰まって「う、嘘だよ!」と言い残し逃亡した。それを見た護衛のカインさんが苦笑い。
「おーマルラもさすがだねえ…そのうちミレイ様より怖くなる…」
「なにかおっしゃいました、カインさん?」
「イエ、ナンデモゴザイマセン」
マルラは腰に手を当てていい笑顔でカインさんに言うと、固まった彼はギクシャク答えた。
「……ふふっ、二人ホント仲良しね」
椅子に腰掛けながら笑うと、マルラにギロッと睨まれた…怖い。
「あたしとしては、非常に不本意なんですけどね!アレが婚約者なんて。立場上仕方ないですけれど」
「なにを照れているんだい、ハニ〜。ボクを愛してるのは知ってるよ…ー、どぁあ!」
テーブルが使われるのはわかっていたから、咄嗟にティーセットはトレイに載せて退避させてた。
仮にも婚約者をテーブルの下に沈めたマルラは、「ほんっっ…とキモい!」と毒づくけど。
頬がほんのりと赤らんでた。