王太子殿下と王宮女官リリィの恋愛事情
「フェイト、お眠かな?」
「ふぅ」
3ヶ月目でまだ喋れない息子だけど…最近、小さな声を出せるようになってきた。
「リリィ」
「どうしたの?お仕事は…また、抜け出してきたのね?」
わたしがため息を着くと、メイフュ殿下はバツが悪そうな顔をする。
「午前中の分は済んだ…お、フェイトまた重くなったな」
最初はおっかなびっくりで危なかったメイフュ殿下の抱っこも、今は慣れて堂に入ってる。たまにわたしを休ませるため、フェイトのお世話も進んでしてくれていた。
「ふぅ」
「お、また声が出てるな。よし、フェイト。最初はパパって言うんだぞ?」
メイフュ殿下のパパらしい意地がかわいくて…それでもママとしては譲れません。
「フェイト、一番最初はママって言うのよ」
「リリィ、ずるいぞ…だが」
フェイトを抱いたわたしを、メイフュ殿下は息子ごと抱きしめてくださった。
「また、次の子どもに言わせればいい。順番に…いかがかな?」
「……何人作るおつもりですか?」
呆れて言えば、メイフュ殿下は愉しげに「限界に挑戦するか」とおっしゃる…。
「……勘弁してくださいよ」
「いや、おまえが愛しすぎるからいけない…リリィ。おまえがいてよかった…おまえと生きていける…こんな幸せがあるのか、と今でも信じられないくらいだ」
メイフュ殿下がいっそう力を込めて抱きしめてくる。離したくないように…。
「……わたしも、です。わたしはここにいます。ずっとあなたのそばにいますから」
わたし達はもう一度誓い合うように、キスをした。
そう、二人。何があっても決して離れない。
ずっとずっとそばにいるーー。
(終)